フランス、イタリア、メキシコ料理、イベント会社…マルチな経験を活かして、キムチの新境地を切り開くオーナーの物語「キムチ工房 -小千谷-」

お邪魔した日 2023.11.26

最近、食べ過ぎたから、ダイエットしなきゃね。

わかる…腸活とかいいかな。

だよね。キムチとかよさそう。

それなら小千谷にキムチのお店あるよ。

じゃあ、行ってみよっか!

キムチ工房

小千谷には、本場韓国のオモニ(韓国語で「お母さん」)が代々受け継がれて作る、こだわりのキムチ屋さんがあります。
白菜キムチやニラキムチ、キムチの素まで様々なキムチを販売されています。そんな街のちいさなキムチ専門店には、オーナーのこだわりと信念がありました。

お話してくれた方

長谷川 英明さん
Hideaki Hasegawa

1981年生まれ。20歳のころ、小千谷商工会議所前の焼肉屋「山ちゃん」を居抜きで焼肉屋を始める。焼肉屋で取り扱っていたキムチが好評で、キムチ専門店として営業をスタート。フランス、イタリア、メキシコ料理、イベント会社勤務からダブルダッチ団体世界4位とマルチすぎる才能の持ち主。

「キムチ工房」までの道のり。

―――こちらのお店って、いつ始められたんですか。

長谷川さん:22年前ですね。元々はキムチ屋さんじゃなくて、僕がちょうど20歳の時に、いきなり焼肉屋さんをやったんですよ。本町の小千谷商工会議所の前にあった「山ちゃん」というお店の居抜きで、母と始めました。

―――20歳で焼肉屋を始められたんですか。

長谷川さん:そうなんです。ほんと、20歳で世の中のことも何も知らない若造だったので、お店の名前も看板とかも、全部そのままでやってましたね笑。焼肉屋だったんで、母がキムチとか韓国料理もちょっと出しながら営業していました。

―――なるほど。焼肉屋さんからキムチ屋さんはどういう経緯で。

長谷川さん:市役所の方がよく飲みに来てくれたんです。その方が「ここのキムチ美味しいから、よかったら市役所売りに来てよ」っていうことで市役所に販売させてもらっていました。
市役所に売りに行ったら、おかげさまで非常に好評いただきました。そこから、焼肉屋もやってるんだけど、キムチも販売するみたいなかたちになりました。

―――なるほど。キムチが人気だったんですね。

長谷川さん:おかげさまです。そこから焼肉屋をやめて、キムチ専門店として今の店舗の隣の家でやってたんですよ。そこから、徐々に注文をいただくようになり、お店を今の店舗に移しました。

群馬から買いに来るほど人気なキムチたち

店主のスゴすぎる経歴。

―――そこから今まで「キムチ工房」を続けられていたんですか?

長谷川さん:実は、そうじゃないんです。今の店舗で2~3年続けていったとき、従業員さんも入ってきて気持ちが落ち着いたんです。そこから「もうこのままずっとキムチ屋さんで行くにはちょっとな」と思って、「自分の好きなことを。もっと夢に向かっていこう」と思って、キムチ屋を一旦やめて、いきなりアメリカ行きました。

―――アメリカ!?

長谷川さん:そうなんです、アメリカに行っちゃうんですよ笑。なぜかと言うと、その頃はカフェブームだったです。おしゃれなアメリカの家具とか、モダンなブームがありましたね。そういうことで、アメリカ文化をもっと自分の目で見たいっていうので、単身でアメリカに。

―――単身でスゴいですね。

長谷川さん:それでアメリカに長くいるために、語学学校に通って1年半ぐらい学生ビザをもらいました。アメリカで多く学ぼうと、世界中の飲食店やカフェとかベトナム料理店など、色々見たんです。でも、そこですごい失敗をするんですよ。

―――え、どういうことですか?

長谷川さん:英語を覚えにアメリカに行ったのに、全く英語を覚えないで帰ってきたんです笑。学校でアジア人たちと一緒にいましたね。で、ずっとダブルダッチっていうのをやってました。

―――ダブルダッチって、縄跳びの?

長谷川さん:そうです。英語を全然覚えないで、ダブルダッチと食べ歩きばっかり。マイケルジャクソンが一番最初にステージに立ったと言われているニューヨークのアポロシアターっていうのがあるんです。そこで、ダブルダッチの世界大会あるんですけど、そこで4位になっちゃったんです。

―――ダブルダッチ、世界4位!?

ダブルダッチをする長谷川さん

長谷川さん:もちろんこれは、僕だけの力とかじゃなくて、チーム競技なので。チームというか、人に恵まれたなぁと思います。その後、英語を覚えないで帰ってきました。結局、アメリカで飲食店を見たからといって、すぐいきなり飲食店ができるわけじゃないので。そこで、本気でちょっと料理を覚えなきゃいけないと思って、フランス料理の修行に。

―――そこからフランス料理の世界に。

長谷川さん:はい。なんでフランス料理にしたかっていうと、今いろんな食べ物屋さんがありますよね。僕がその時思ったのは、フランス料理って「焼く」、「煮る」、「炒める」、「スープを取る」、しかも「高級料理」もある。派生して色々できると思いました。それで、フランス料理の修行を恵比寿と目黒で、それぞれ2年ほど修行しました。その時の作戦は、大きいホテルみたいなところで仕事をすると狭い分野しか学べないと思って、シェフと2人っきりでやるような小さいお店に修行に行きました。

―――しっかり考えられていたんですね。

フランス料理の世界へ(写真右から3番目)

長谷川さん:はい。おかげでたくさん教えてもらいましたね。小さいお店で経験を積ませてもらったので、今度は「大きいお店はどうやってマネジメントしてるのか」気になったんです。それで東京の大きいところで2年くらいマネジメントを学ぶために働きました。

―――ホント、いろいろ学ばれるんですね。

長谷川さん:ですね笑。それで小千谷に帰ってきて、またキムチ屋に戻りました。キムチ屋をやっているなかで、弟にキムチ屋を継がせるってことになり、僕も独立して昔の焼肉屋のリベンジをやろうと思ったんです。そこで、自分は「接客」や「料理」の経験はあるんですが、店の「空間デザイン」が思いつかないって気づいたんです。

―――もしかして・・・。

長谷川さん:そうですね。空間デザインを学ぶためにフェス業界に入りました。

―――フェス業界ですか笑。

長谷川さん:フェスって会場を「作っては壊し」の連続なんですよ。 そこで大工仕事とか色々学べると思って、フェスやイベントの装飾を1年くらいやってました。 日本全国をトラックで、北は北海道の、南は熊本まで。ライジングサンミュージックフェス、フジロック、グリーンルームフェスティバルなど日本の有名なフェスに携わらせていただきました。

フェス会場の制作を行う長谷川さん

―――ちょっと、スゴすぎます笑

コミュニケーションを大切に。

―――苦労されていることってありますか?

長谷川さん:ありますね。次から次へと体験したことないことの連続です。例えば、スーパーさんにキムチを卸すときも、「伝票処理をどうすればいいんだ」とか。あとは、スーパーさんに卸している関係で、「買っていただいているお客さんの顔が見れない」という悩みもありますね。

―――なるほど。コミュニケーションは取りたいですか?

長谷川さん:そうですね、お客様と会話して、おすすめなものや食べ方を紹介したいですね。なので、ホームページを作って、直接来ていただけないお客さまと交流したり、うちのキムチをもっと説明したり、おすすめの食べ方を紹介したり。そういうことを来年から本格的にやっていきたいなと思ってますね。

お客さんとのコミュニケーションを大切にしたいと語る長谷川さん

恩返しのために。

―――ちなみに目標とかってありますか

長谷川さん:目標ですか。地球への恩返しですね。

―――すごい目標ですね。

長谷川さん:実はさっきの経歴の中で、1年間アジアを旅してるんですよ。食べ歩きです。洋食とかは大体作れるんですけど、やっぱりタイ料理とかカンボジア料理とか、その辺が全然わからなかったんです。それで、実際食べると美味しいんですよ。

―――例えば、どんな国に行かれたんですか?

長谷川さん:インドに行きましたね。インドって本当、貧しいところが多いんですよ。家にテレビもなければ、電気もなく、ガスはギリギリあったりなかったり。基本は牛糞を壁に貼り付けて、それを断熱材代わりで使っているんです。で、それを剥がして、火につけてご飯を炊くみたいな。もう日本の昭和初期・中期みたいな生活がありました。

―――スゴい日本とは違う環境ですね。

長谷川さん:でも、皆さんニコニコしてるんですよ。その中で「あなたは幸せですか?」っていろんなインド人に聞いて回ったんです。面白いのが、8~9割の人が「幸せだ」って言うんですよ。「なんで幸せなの?」って聞いたら、「親が病気していない」とか「家に屋根がある」とか、「仕事しながら給料がもらえてる」とか。もう日本にいて当たり前のことが、彼らの幸せだったんですよ。その頃、僕は「iPhoneが買いたいのに買えない」とか。十分幸せなのに、その幸せに気づけてなくて。そこで、「幸せはもう周りに落ちていて、気付くものなんだな」っていうのを、インドで学んだんです。

笑顔で笑うインドの子どもたち

―――素晴らしい気付きですね。

長谷川さん:はい。僕の目標は、そういった貧しい国、恵まれない子供たちの人生を、少しでもいい方向に変えられるようなことができたらと。ほんと、僕自身もいろんな世界に出て、学ばさせていただいたんで、その恩返しをするために、今は頑張ってますね。

手間暇をかける。

―――キムチを作るうえで「こだわり」ってありますか。

長谷川さん:お客さまの体をつくるものを作っているので、こだわりはありますね。もちろん健康に良くて、味も美味しくて、安定した品質でお客さまの食卓に小さな幸せをお届けできるよう作っています。だからこそ、より良いものを作るために、素材選びから始まり、作り方や管理の仕方が特にこだわっています。

―――なるほど。素材にはどんなこだわりが。

長谷川さん:素材でしたら、できるだけ地元の野菜を使うようにしています。よく「地元の野菜を使ったからなんだ」っていう話もありますが笑。要は、新鮮なんですよ。もちろん白菜とかも常に小千谷産があるわけじゃないんで、その時期によって、可能な限り地元の農家さんから買っています。最優先は、地元の野菜、新鮮な野菜ですね。

新鮮な野菜たちの仕込み場所

―――そうなんですね。作り方でのこだわりも気になります。

長谷川さん:例えば、白菜の塩漬けなんですけど、工場で作るキムチだと白菜を塩水の中に漬けます。塩分濃度2.5%~3%の塩水の中に野菜を2~3日間とか漬けて、それをまた水で洗います。ウチも昔はそうやって作っていたんですけど、料理の経験をしてみたら気付いたんです。野菜を水で洗うってことは、その野菜の「うま味」も「栄養」も流れてしまうって。

―――確かに、そうですね。

長谷川さん:だから、ウチは野菜を洗わなくていいような塩加減で作っています。塩分を摂りすぎない、だけど素材の味を活かしつつ、余分な水分を最大限に出して、洗わなくていいように。

―――キムチといえば、唐辛子ですが。

長谷川さん:唐辛子、大事ですね。韓国のキムチの唐辛子って、食べるとそこまで辛くなくて、甘みがあります。使う種類は、1種類だけだと複雑な味にならないので、3種類ブレンドしています。

―――3種類の唐辛子。

長谷川さん:まず、甘みのある唐辛子。次に、辛みのある唐辛子。最後に、1番目の甘みのある唐辛子の細かいもの。細かいと、水に溶けやすく、自然な色が出やすくなるんですよ。それ以外にもブレンドはありますね。

こだわりぬいた本場韓国産の唐辛子

―――どんなブレンドですか。

長谷川さん:「魚醤」です。色んな魚で魚醤があるんでうよ。カタクチイワシだったり、イカナゴだったり。青森だと「しょっつる」とか。色々あるんですけど、ウチは特徴のあるカタクチイワシとイカナゴの2種類の魚醤を使っています。

―――それぞれ違いはあるんですか。

長谷川さん:そんなに変わんないんですよ笑。そんなに変わらないんですけど、やっぱり片方だけだったら、生臭さが際立ったりするので、お互いの良いところを補い合うのが目的ですね。

―――そういえば、ニンニクも大事ですよね。

長谷川さん:ニンニクは、こだわっています。剝いてあるニンニクとか、ラーメン屋さんに置いてあるすりおろしニンニクって、結構添加物とか防腐剤がすごいんですよ。そうなると味がやっぱり違うんですよ。なのでウチは、ニンニクを全部手でむいてます。

―――1日、どれくらいの量ですか。

長谷川さん:1日2、3キロですね。2人でも毎日1時間、ひたすらむいてます笑。

―――それは大変ですね。

1日2~3キロ使われる大量のニンニク

スーパーのキムチと本格キムチの違い。

長谷川さん:そうですね。仕事を楽にするために真空パックのむいてあるニンニクとかも試してみたんですが、手間はかかっても「手でむいた」ものが美味しいですね。

―――スーパーで売っているキムチと本格キムチって何が違うんですか。

長谷川さん:スーパーで売っているキムチと本格キムチって何が違うんですか。
発酵させないために、添加物やph調整剤、酢を入れたりするんです。キムチって本来は乳酸菌が発酵して、乳酸を出して酸っぱくなるんです。スーパーで売っているキムチは、最初から酢などで酸味を再現するんです。

―――なんで発酵をさせないんですか。

長谷川さん:流通するうえで、邪魔だから発酵をさせないと聞いたことがあります。発酵が進むと容器がパンパンになったり、最悪破裂することもありますからね。

―――すっごい勉強になります。。

キムチについて、さまざまなお話をしていただきました

聞くと、試したくなる。

―――キムチを作っている方ならではの「裏ワザ」ってありますか。

長谷川さん:人それぞれ好みはありますが、キムチ鍋やキムチ炒飯をされるとき、酸っぱくなったキムチを使う方が美味しくなりますね。鍋にも炒飯にも豚肉って使うと思いますが、「キムチ」と「豚肉」って相性がいいんですよ。キムチのちょっとした酸味が、豚肉の脂身のしつこさを和らげるんです。

―――次からやってみます!他にはありますか。

長谷川さん:そうですね。キムチ鍋に「ツナ缶」を入れるとめちゃくちゃ美味しいです笑。しかも、ノンオイルじゃなくて、オイル漬けの方のツナ缶。ぜひ試してみてください。

そのままでも、鍋に炒飯に、なんでも合うキムチ

食を通じて、届けたい想い。

―――どんな人に食べてもらいたいですか。

長谷川さん:皆さんです笑。スーパーでキムチを買うのは、自分や家族のためという目的があると思います。やっぱり、そういう目的を持った方が安心して食べてもらえるように。その方が「美味しいね」って言って、食卓が豊かになってほしいです。

食べてもらい人を笑顔で語る長谷川さん

店舗情報

店舗名キムチ工房 -小千谷-
住所新潟県小千谷市薭生丙1404
営業時間9:00〜18:30
定休日土曜日
席数テイクアウトのみ
駐車場5台
電子マネー等不明
電話番号0258-82-2406
子ども辛すぎないけど、小さいお子さんはお気をつけて。
注意事項特になし
確認日:2023年11月26日
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この記事を書いた人

趣味で小千谷を勝手にPRしている、おやじです。
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